2010年5月31日月曜日

坂本龍馬

黒い岩山からは煮えたぎる溶岩の川が見えました。わたしは川の中で一艘の舟が灼熱の荒波に翻弄されているのに気がつきました。その舟はといえば燃え盛る炎に今にも飲み込まれそうです。

舟の中では、恰幅のよい男たちがなす術もなく火炎に焼かれているのでした。彼らは、あまりの暑さにしきりにのどの渇きを訴え、足下に転がる無数のはっさくに齧りついていました。しかし、それらの果物はすべて熱のためドライフルーツと化し、一滴だって果汁を搾ることもできないのでした。

彼らの絶望によって発せられた絶叫にわたしが耳を思わず塞ぐと、彼はいいました。「この男たちは、もともと政治家で、いい年をして坂本龍馬へのあこがれを表明するなどして、安易で見え透いたイメージアップを図ったがために、このような苦しみにあうこととなったのだ」

あらゆる罪を見逃さない地獄の緻密さにわたしは感嘆して叫びました。「おお、いかに超辛口純米酒《船中八策(日本酒度+8.0)》がよい酒だとしても、これらの罪人たちの渇きはとうてい癒せはしないでしょう!」

2010年5月29日土曜日

うんこが漏れそうなので

ただいま、便活中!

老眼

人生経験を深め、人間性に対する洞察力を身につけた者は、卑近にとらわれずに崇高を見上げ、些末にこだわらずに大局を見定めるようになる。これを称して慧眼と呼ぶ。わたしは日々の切磋琢磨の甲斐あってか、若輩者ながらついにこの慧眼を備えるに至った。とはいえ、夜の星を夢中になって観察して足下の穴に堕ちた哲学者タレスの例もある。英知に満ちた眼差しだけでは日常生活上思わぬ災難に出くわしかねないのだ。そこで、ちょうど近目の人が使用するような道具、いわゆる眼鏡が必要になるわけだが、近視用のこれがバカ高いのに引き換え、慧眼用の眼鏡はビックリするほど安価なのだ。高くて千円、探せば百円ショップでも 売っている。「慧眼の士でよかった!」と思える瞬間である。

殺人予告

近頃では、ネットで予告した上でなければ、殺した気にならないのです。この間なども、掲示板に書き忘れまして、殺害してから、「あっ、忘れてた!」なん て、まあ、とんだポカをしでかした次第でございます。まったくお恥ずかしい限りですが、そうなるとどうも達成感がないので、私的には、殺したうちには入れていません。ええ、もちろん、死んでますとも。殺しましたとも。ですが、これは私が犯した殺人ではない、ということでご理解をいただきたい、とこう思っているわけでございます。

一発ギャグ

ぼくたちはそいつを地べたに引き倒し、泥まみれにしてやった。棒で殴ってやろうとすると、そいつは頭を両腕で防御しながら「助けて」と叫んだ。まるで小さ な虫のようだったので、大笑いした。もう一度、振りかぶると、やはり同じように縮こまって、命乞いをした。ほんとに虫だ! ぼくたちは笑った。何度やっても虫だ! どれくらいそうやってそいつを怯えさせたことだろうか、どれだけ「助けて」と言わせたことだろうか。だけどしまいには飽きたので、頭を割って中身を噴出させてやった。

復活

「地球温暖化は最後の審判が近づいた証拠なのです。その理由をお話ししましょう。地球温暖化が進むと地上ばかりでなく、地下も暖まります。すなわち、地下に存在する事物も同時に暖められるわけなのですが、これには埋葬された遺体も含まれるのです。冷たい亡骸が暖められるとどうなるかというと、これはいわば活力を吹き込まれたという次第でして、まさしく復活の準備が整うといっても過言ではないのです。ですからわたしたちは、地球温暖化は、最後の審判における死者の復活の兆候であるとみなしています。さあ、祈りましょう!」

万死に値す

「魂は自らの成長のために生まれる前に、自分が果たすべき役割、自分が立ち向かう困難をあらかじめ決めておく・・・そのようにして幾度も生に挑戦し、経験を積み、魂としての強さと深みを獲得していくのだ」

「死んだ数だけ強くなれる、のですね!」

ヘッドフォン

次にわたしは、両耳にヘッドフォンをして音楽を聴いている一群の人々に出会いました。だが、やがてわたしが気がついたのは、ヘッドフォンと見えたものがそのじつ棘だらけの甲虫であり、これらの人々がその醜い虫に耳を齧られているのだということなのでした。彼らは耳から血を流しながら、苦悶のリズムを口ずさんでいました。恐れおののくわたしに向かって彼はこのようにいうのでした。

「これらの者どもは生前、電車の中で大きな音量で音楽を聴き、ヘッドフォンから漏れる音で周囲の人々に不快な思いをさせていたのだ」

「地獄でこんな目にあうくらいならば」とわたしは思わず叫びました。「5万円のインナーイヤー型ヘッドフォンも安いものだ! しかも、ポイントカードなら15%もポイントが還元されるときている。買わない手はあろうか!」

オイース

有事だよ、全員召集!

太陽光

そこでは年配のご婦人方が、激しく照りつける6つの太陽にじりじりと焼かれているのでした。彼女たちは苦悶にのたうち回り、聞くに堪えない恐ろしい叫び声をあげていました。わたしが震えていると、彼はいいました。

「これらの淑女たちは生前、日差しを激しく憎み、スカーフやら、つばの広い帽子やら、得体の知れぬクリームで肌を完全防御して、日焼けを無意味に怖がること、かえって見苦しいほどであったので、死後このような責苦にあっているのだ。」

「おお、多少のシワやシミを恥じたせいで、このような目にあうとは恐ろしいことだ。」とわたしは叫びました。

デカルトは

我思うゆえに我ありホトトギス。