2010年7月12日月曜日

夢と時間(2)

彼が私を連れてきた場所は、あたかも新宿駅のホームのようなところでした。ホームに引かれた白線沿いに男たちが一定の間隔で並ばされており、これらの男たちが少しでも線を越えようとすると、どこからともなく「白線の内側までお下がりください」と鋭い叱責の声が鳴り響くのでした。

やがて電車がやってきました。 その電車の先頭にはある数字が刻印されているのに私は気がつきました。

電車が停車すると、男たちは乗り込みました。その車両はちょうど男たちの数だけあり、つまり、一車両にひとりが乗ることとなったのでした。

各車両にはそれぞれ7匹の鬼どもがすでに乗車しており、男がやってくると即座に取り囲みました。それらの車両には、「鬼専用車両」と記されていました。

愚かな男は喜々としながらさっそく周囲の鬼たちの尻を触りはじめました。しかし、その邪悪な手が鬼たちの丸い臀部に触れるや否や、男は苦悶の叫びを上げました。男は絶叫しながら手を離します。ですが、すぐにまた別の尻をまさぐりはじめ、再び苦痛にのたうちまわるのでした。

というのも、鬼の尻はそれ自体が責苦の道具となっていたのです。

第一の鬼の尻には1万ボルトの高圧電流が流れていました。

第二の鬼の尻には、トリカブトの1億倍の猛毒が塗られていました。

第三の鬼の尻は鋭いガラスの破片が無数に埋め込まれており、触っただけで手がちぎれました。

第四の鬼の尻からは強烈な幻覚剤が分泌されており、ほんのわずかな分量で100年分の悪夢にうなされました。

第五の鬼の尻には針のような剛毛がびっしり生えており、触っただけで手が穴だらけとなりました。

第六の鬼の尻からは、ひと嗅ぎで鼻の全細胞を1万回も悶絶死させるに足る最悪の匂いが検出されました。

第七の鬼の尻は、第二の鬼の尻と第五の鬼の尻を合わせたよりもずっと強い苦痛をもたらしました。

男はどんなにひどい目にあおうとも、このすべての尻を何度も繰り返し触らずにはいられないのでした。やがて発射ベルが鳴り、ドアが閉まりました。そして電車は発車し、永遠にやって来ない次の停車駅に向かって旅立っていきました。

わたしは男たちが味わう永遠の業苦を思いながら叫びました。

「おお、これらの男たちはなんと愚かなのでしょうか。苦痛が待ち受けていると知りながら、お尻に手を伸ばすことをやめないとは!」

すると彼はわたしに次のようにいいました。

「痴漢は尻を裏切らない、尻も痴漢を裏切ってはならない。これはまことに真実である」

わたしはこの恐るべき言葉を聞いて、とんでもない訴訟に巻き込まれはしないか怖れました。

*ここに知恵が必要である。賢い人は、電車の数字にどのような意味があるかを考えるがよい。そして、その数字は999である。

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