2010年7月6日火曜日

夢と時間(1)

さらにその後、わたしが目にした光景は、残虐であると同時にまったく奇々怪々なものなのでした。

巨大な毛虫が無数に蠢く中、両手を高々と掲げた裸の男たちが立ちすくんでおりました。毛虫たちは奇怪な叫び声を上げながら、男たちの足を這い上がり、ついには腰の辺りにまで達します。すると耐えきれなくなった男たちは手を下ろして、虫たちを払いのけようとするのですが、鬼たちが素早くやってきて、鬼が独自に強化した竹刀で腕や脇腹を激しく叩くのです。男たちは苦悶の叫びを上げながら、再び手を挙げざるをえないのでした。

つまり、男たちは手を下ろすことが許されないのであり、このようにして彼らは邪悪な毛虫に覆い尽くされ、少しずつ齧りとられ、最後には掲げられた手のみが残されるという案配なのでした。

「バンザイをしただけでこのような罰にあうとは恐ろしいことだ」とわたしが思うと、それを見透かしたかのように彼がいいました。

「これらの男たちは『満員電車では両手を上げています』などと言って、迷惑顔と被害者面を足して2で割ったようなご面相をしてみせたため、このような責苦を定められたのである」

「なるほど、痴漢を責めるどころか、被害に遭った女性を莫迦にするこうした連中の浅ましさといったら、まったく野方図きわまりないと申せましょう。ですが、かたやこうした男たちに罰を与えるいっぽう、痴漢たちを見逃したのでは、地獄の鬼とて女性に顔向けできるとは思わないのですが」

彼はわたしのこの言葉を聞くといった。

「では、来るがよい」

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