2010年7月30日金曜日

愛を国す

おお、あの美しい国旗が壇上に掲げられるやいなや、ぼくはほかのどの生徒よりも早く起立した!

誰よりも胸を張り、背筋をピンと伸ばし! ぼくは優越感とともに愛国心に足りぬ同級生たちを見下ろす。だが、あいつはなんとしたことだ! 俺より首が伸びてやがる!

ぼくは負けじと首を伸ばす。頸椎が破壊されるその極みで踏みとどまり、ライバルをチラ見すると、なんとあいつめ、つま先立ちになった、体が異様に細くなった、頭蓋骨が平たくなった!

こうなりゃ奥の手だ。宙に浮かんでやった。起立の最上級というわけだ! するとあいつまでも、爪楊枝のようになったあのきざな野郎までも、浮遊しだしたではないか。

ついにおっ始まった。どちらが国を愛しているかの、最終決戦が、全校生徒の頭の上で。

ああ、だが、そのとき、愚かな争いにうつつを抜かすぼくらを尻目に、ぼくらの担任、心の先生、愛国心では誰ひとり並ぶもののいないあの尊敬すべき吉田先生は、体育館の床に頭までズッポリめり込んでいた・・・・・・。

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