小さい頃からプレッシャーというヤツに弱くてですね、ここぞというときにたいていシクジるのですよ。度胸がないというか、本番に弱いというか。それで、できるだけプレッシャーを避けて生きてきたわけです。徹底して。
まあ、それはそれでうまくいったのです。影を辿って歩くような消極的な生き方ですが、それに何の不都合もなかった。ところがですね、みなさんこうおっしゃるのです。「かけがえのない命」と! 「たったひとつの命」と! とんでもないことだ、わたしはこう思いましたね。そこで、わたしはモノの分かった人に尋ねてみましたよ。
「かけがえのない命、たったひとつの命と主張する人がいるのですが、それは本当ですか?」
「うむ、そのとおりじゃ」
「ですが、みんながみんなそんなにかけがえのないわけではないんでは? なかにはどうでもよい命だってあるのではないでしょうか」
「いや、命はどのような命だって尊く大切なものなのじゃ」
「ひょっとしたらと思ってお尋ねするのですが、わたしの命もそうなのですか」
「もちろんそうじゃとも」
なんと、わたしの命がそんなにも大切なものだなんて! これには参りました!
それからというもの、もう恐ろしくて恐ろしくて。そんな貴重なものとも気づかずに、まるでビニール袋にぶら下げるかのようにして生きてきたわけですから。外にだってもう出れやしません。おちおち夜も眠れません。そのプレッシャーたるや!
こんな厄介なものを背負わされると分かっていたら、生まれようだなんて思いませんでしたよ!
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