2011年2月28日月曜日

誤解

わたしの母は、若い頃、キリスト教会に通っていたことがあるというが、受洗したかどうかまでは知らない。わたしの父は基本的には無信仰だと思うが、法要などは尊重している。

15年ほど前、南インドに行った時の話。わたしはゴム農園を訪問し、どうやってゴムが採れるのかなどを見せてもらった。見物の後、農場主の家にお邪魔して、冷たいジュースとお菓子をご馳走になった。

農場は観光地から離れたところにあり、外国人がやってくるのは珍しいことに違いなかった。それで、農場主はわたしに日本のことをいろいろと尋ねてきた。わたしは日本の気候や暮らしについて説明した。

「君の宗教は何かね」

「ああ、ぼくは無宗教です」

「では、君の両親はどうだね」

わたしは親の宗教のことなど考えたこともなかったので、適当に答えた。

「父は仏教徒、母はキリスト教徒です」

農場主はこれを聞くと目を丸くして言った。

「なんと! 異カースト間結婚(inter-caste marriage)なのかね!」 

2011年2月18日金曜日

新刊案内

架空の書物の書評集『完全な真空』(レム)から40年。

ボルヘス、エーコらの存在しない書物の物語、虚構の都市の報告『見えない都市』(カルヴィーノ) を凌ぐメタフィクションの傑作、ここに誕生。

その名も『汚物の世界史』。

存在しない架空のウンコについての物語!

《内容紹介》ーーーーーーーーーーーーー

世界創造の時から神の腸内に留まり続ける宿便とその栄光について。

エデンの園のリンゴを食べた後、アダムとイブがひった軟便の比較(付・ウンコに原罪はあるかどうかの神学的議論)。

トリケラトプスのモツ煮込みをタラフク食った後に排出されるクソとその中に含まれる奇怪な回虫について。

悪魔の屎は果たして悪魔か?

本能寺の変を生き延びた織田信長が最初にしたウンコ。

無限の図書館のあちこちで落ちているウンコ。

ウンコが見た夢とその夢の中で見られたウンコ。

人間の想念を読み取り自在に形を変えるウンコ。

自ずと文字の形をとり主張するウンコ。

永遠に拭うことのできない罪の記憶とウンコ。

時の流れも押し流すことのできない愛の痕跡とウンコ。

人造人間たちの憧れの的となったウンコ。

排泄の必要から解放された未来社会で厳重に保管されるウンコ。

人類最後のウンコとその宇宙史的位置づけ。

弥勒仏が救済時に漏らしたウンコ。

終章—ウロボロスのウンコ・・・・・・ウンコの円環が閉じるとき。

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内容見本(本物のウンコつき)贈呈いたします。

2011年2月17日木曜日

ロックンロール・ファンタジー

おそらくあの控え目な「君が代」にパワー・リフと麻薬のように病み付きになるサビを与えることができたなら、日本の状況は一変するにちがいない。

強制せずとも口をつくメロディ、自然発生的なヘビー・ローテーション、年中無休24時間営業のコンビニ・ループは、愛国心の育みに決定的な作用をもたらすはずなのだ。となると、同胞愛はもはや学校で養う必要はない。いまやカラオケ・ボックスこそがその役目を担うこととなる。切ない愛、人生への励まし、そして国家への忠誠! カラオケ・ボックスにはそのすべてが備わるのだ。

新時代の国民精神は、熱唱、合唱、絶叫、酩酊、ポテトチップス、サワー各種一〇〇円(昼間のみ)、破廉恥なおふざけ、乳くりあい、王様ゲームの中から産声を上げるのだ。分厚い歌本こそ新しい教科書だ。躍起になって作る必要なんかない。なにしろ、あれほど熱心に人々が読む本はない、とんでもない集中力だ、耳に向かってどんなにガナリたてていようと夢中でページを繰っている、きっと銃弾雨あられの中でも血眼で次の曲を探すことだろう。国民は徹底的に鍛えられるのだ。

おお、カラオケ・ボックスこそ新たな靖国。合祀反対でも合唱大賛成! A級だのB級だのに目くじらたてる輩も、AメロBメロにはもうメロメロ! そんな予想だにせぬ国家的転調も、国歌の節をキャッチーにポップにメロウにノリノリにダンサブルに変えるだけで可能になる。そして徹底的なリミックス、根本的なリエディット、最新鋭のリマスター、包括的なサンプリング、あらゆる状況に対応した無数のヴァージョン戦略が、「君が代」を空前絶後史上最強のキラーチューンに仕立て上げる。KIMIGAYO feat. Teng Know Hey Crew! 

日本は並みいる列強どもを押さえてヒットチャートを上り詰めることだろう。全地球上を唖然とさせる赤丸急上昇。アメリカと中国を瞬く間に引きずり下ろすのだ。そう、ジャパン・アズ・今週も来週もその次も、永遠に第一位! ヒットパレードはまだまだ終わらない。