2011年2月17日木曜日

ロックンロール・ファンタジー

おそらくあの控え目な「君が代」にパワー・リフと麻薬のように病み付きになるサビを与えることができたなら、日本の状況は一変するにちがいない。

強制せずとも口をつくメロディ、自然発生的なヘビー・ローテーション、年中無休24時間営業のコンビニ・ループは、愛国心の育みに決定的な作用をもたらすはずなのだ。となると、同胞愛はもはや学校で養う必要はない。いまやカラオケ・ボックスこそがその役目を担うこととなる。切ない愛、人生への励まし、そして国家への忠誠! カラオケ・ボックスにはそのすべてが備わるのだ。

新時代の国民精神は、熱唱、合唱、絶叫、酩酊、ポテトチップス、サワー各種一〇〇円(昼間のみ)、破廉恥なおふざけ、乳くりあい、王様ゲームの中から産声を上げるのだ。分厚い歌本こそ新しい教科書だ。躍起になって作る必要なんかない。なにしろ、あれほど熱心に人々が読む本はない、とんでもない集中力だ、耳に向かってどんなにガナリたてていようと夢中でページを繰っている、きっと銃弾雨あられの中でも血眼で次の曲を探すことだろう。国民は徹底的に鍛えられるのだ。

おお、カラオケ・ボックスこそ新たな靖国。合祀反対でも合唱大賛成! A級だのB級だのに目くじらたてる輩も、AメロBメロにはもうメロメロ! そんな予想だにせぬ国家的転調も、国歌の節をキャッチーにポップにメロウにノリノリにダンサブルに変えるだけで可能になる。そして徹底的なリミックス、根本的なリエディット、最新鋭のリマスター、包括的なサンプリング、あらゆる状況に対応した無数のヴァージョン戦略が、「君が代」を空前絶後史上最強のキラーチューンに仕立て上げる。KIMIGAYO feat. Teng Know Hey Crew! 

日本は並みいる列強どもを押さえてヒットチャートを上り詰めることだろう。全地球上を唖然とさせる赤丸急上昇。アメリカと中国を瞬く間に引きずり下ろすのだ。そう、ジャパン・アズ・今週も来週もその次も、永遠に第一位! ヒットパレードはまだまだ終わらない。

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