2011年1月25日火曜日

地獄史観

その次にわたしが連れて行かれた地獄では、それまで以上に凄惨な責め苦が繰り広げられておりました。わたしはあまりの残虐さに内蔵に変調をきたし、ひどい下痢に見舞われたどころか、小便をすべきところから脱糞してしまったほどでした。

「おお、ここは何の地獄なでしょうか。わたしはここ以上に恐ろしいところはまったく知りません!」

すると彼は答えました。

「これらは生前、反日思想と自虐史観を徹底的に批判し、誇りに満ちた日本のための歴史教育とやらを提唱していた者どもである」

「なんと、わたしは歴史教育のことはとんと分かりませんが、行いの善悪のみならず思想信条によっても地獄に落とされることがあるとはなんとも恐ろしいことです!」

彼は呵々大笑して次のように言ってわたしの誤解を解いてくれたのでした。

「ああ、これらの愛国者たちにはむしろ鬼として活躍してもらっているのだ! 人間界における犯罪の増加、モラルの低下、モンスターペアレンツの跋扈、ネットの掲示板の発明などにより、地獄に堕ちるものの数が急増し、鬼の数が足らなくなっているため、これらの毅然とした人々を臨時雇いとしている次第なのだ。なにせ、自虐を憎むことにかけては鬼以上という連中なのでな!」

「なるほど、まさにこれらの凛とした人々以上に他虐にうってつけの人々はそうは見つからないでしょう!」

まさにそのとき、臨時雇いの鬼のひとりが、罪人の性器を立派な歴史教科書でめった打ちにしているところでした。

「ところで、この汚らわしい罪人どもはどのような罪を犯したのでしょうか?」

「ここの地獄に落とされたものは、みな、生前、良家の子女の前で、自らの猥褻なる箇所を陳列した外道である。地獄では、その罪人に似た傾向を持つ者が責め苦を担当する仕組みになっておるのだ!」

その鬼は罪人の性器を歴史教科書でバチンと挟んだり、しおりのヒモできつく縛り上げたりしていました。

「これを適材適所といわずしてなんといいましょうか!」 わたしは在世中には居場所のなかったこれらの人々が、死後生き生きと働いているのを見て、大いに励まされたのでした。

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