2011年7月11日月曜日

遺書教室(1)

自殺しようと思って遺書を書いた。書いたら、これでよいのか不安になった。それで、友人に見てもらおうとメールした。

すぐさま友人から電話がかかってきた。怒っている。ふざけるな、とも言った。早まるな、とも。

「もっとましな遺書書けよ!」

ダメ出しだ。

ちなみにわたしが書いた遺書はこんなだ。

***
自殺のお知らせ

拝啓
梅雨も明け、本格的な夏を迎えましたが、皆様お元気にお過ごしでしょうか。
さて、このたび地獄へ転居いたしました。
お近くにお越しの節にはどうぞお気軽にお立ち寄り下さい。
まずはご挨拶かたがたお知らせ申し上げます。
敬具

頑張ろうニッポン! 復興への祈りを込めて!
***

「これじゃ引越のお知らせじゃねえか。時候の挨拶なんかイラネ」

「失礼があっちゃまずいだろ」

「しかも、復興なんたらってのはなんだ?」

「何をするにつけこの一文さえあれば角が立つまいと思ってネ」

「思ってネ、じゃねえ。お前、これから自殺しようって人間が、失礼だの角が立つのだの気にしてどうすんだ」

全否定。わたしは劣等感を刺激され取り乱す。「もういい! 遺書なんかもう書かない! 遺書なしで死んでやる! 後で遺書が読みたいって言っても知らないぞ!」

「まあまあ、落ち着け。俺がいいとこ教えてやる。遺書の書き方を教えてくれる遺書教室だ」

「それはいい! これで安心して死ねるというもの。じゃあ、メールでURL送って」

「ばか、そんなヤバいとこ、ネットで宣伝してるもんか。裏2ちゃんねるに忍び込んでようやく電話番号だけ見つけたんだ。教えてやる、メモの準備はいいか、東京03」

「東京はいらないよ。03だけで」

「うるさい。03−XXXX-4229。下4桁は覚えやすいぞ。シニニコイ」

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