2011年7月27日水曜日

遺書教室(2)

電話して分かったのは、遺書教室には2年コースしかないということだった。

しかも相当みっちり学ばなくてはならん。こんな具合だ。

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【1年目〜教養課程】
遺書をめぐる文化を徹底的に学ぶことで、遺書に関する基礎的な教養をしっかり身につける。

《学ぶこと》遺書入門(遺書と遺言の違い)/遺書学原論/遺書史/遺書文化論/遺書批評基礎論/遺書の人類学/世界の遺書研究/日本史遺書研究/IT遺書論/未来の遺書

【2年目〜実践課程】
遺書の書き方を体系的に学び、歴史に残る名遺書を書くための実践力を身につける。学生には卒業制作として実際に遺書を書き、提出してもらう。

《学ぶこと》
遺書の内容・スタイル・書式・長さ/遺書の文字・書体/遺書の素材/遺書の置き場所/緊急時の遺書作成法

【特別コース〜もっと踏み込んで遺書について学びたい方のための特別講座】

遺書の保存法/遺書を用いた復讐法/遺書とスポーツ

【遺書コンシェルジェ・コース〜遺書を仕事に!】
上記課程を全て修了した方のみのための1年間のコース。遺書を用いた企業活性化、遺書関連訴訟事例など、遺書ビジネスのプロのための講座。
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わたしは噛みついた! 「こんな悠長に構えている暇はないのです。いますぐに、でもなんです」

遺書教室の男は言った。「みなさん、そうおっしゃいますが、結果的には満足してくださいます。みなさん、それぞれこだわりの遺書を片手にわたしたちの教室を旅立っていきます!」

「ですが、通っている間に旅立ってしまったらどうするんです! ろくな遺書一枚書けずに死んでしまったら! それは誰が責任を取ってくれるのですか!」

「講師陣が総力を挙げて、遺書を代筆させていただきます」

「そんなんじゃダメ! ああ、もういい!」 わたしは声を荒げた。「死んでやる、死んでやる! 遺書教室のせいで遺書が書けなかった、と遺書を書いて死んでやる!」

「ああ、ああ、分かりました! 分かりました! わたしが特別にあなたをレッスンしましょう。1日で素敵な遺書が書けるはずですよ!」

「そうこなくっちゃ!」

人間死ぬ気になれば何でもできるもんだ。

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